10th exhibition
tsukuda shingo

2016.12.16 fri.-2017.1.09 mon.
11:00 →18:00

music :
brinsley schwarz / the new favourites of brinsley schwarz
ronnie lane / ronnie lane's slim chance
grateful dead / live dead

tsukudashingo

photo by suzuki shizuka

写しとコピーは似て非なり

アメリカの大学のガラス科の課題で、自分の好きな作家の作品を丸々、そっくりに作ってみなさい。という課題があった。やったことのない技法を試したり、そ の形になるまで、何回も練習を繰り返したりと、その課題から学ぶことがとても多いのに驚いた。ただ、その後、困ったことにその作家の作風が自分から抜けず に、随分と悩んだことを覚えている。作家の意図や考えにまで思いが行き届かず、その物の目で見えるところだけ模写してしまった結果だろうか・・・と今になっ て時々思い返すことがある。 一方、日本の工芸においては、古くから「写し」というジャンルがある。基準となる作品や実物をなぞらえ、形状や模様、図柄を模倣して作ることで、刀、陶磁 器では多く見られる。私個人は既に価値を認められた物を再び模倣して作ることに戸惑いを感じる。これは各々の作家の立ち位置の問題で、何が良くて、何が悪 いということではないのだが、今回紹介する木工作家の佃眞吾さんも昨今の写し方に問題があると話してくれた。「生き写しでないとコピーでしかない」。という 彼の言葉には、過去の形を借りる以上、それを単にコピーするのではなく、一旦自分自身の中に取り込み、対話させ、音楽で言えばカバーするという、つもりで 作るという意味がある。作り手が成熟していないと、いつかの私のように、過去に持っていかれてしまうのだろう。 たしかに、彼の作品は写した物もゼロから作った物もすべて佃眞吾の匂いがする。

辻 和美


● 16日(金)は珈琲、 17日(土)は抹茶を京都のお菓子と一緒に佃さんのトレーでお楽しみいただけます。


佃 眞吾 経歴
1967 年滋賀県長浜市生まれ。
1990 年京都にて家具職人として働く。
1992 年職人の傍ら「黒田乾吉木工塾」に通い木漆一貫仕事を学ぶ。
1995 年京都井口木工所にて家具・指物職人として働く。
2004 年京都市梅ヶ畑にて独立。2015 年現在、同地にて制作。国画会工芸部会員。

9th exhibition
iyama mikiko

2016.11.18fri.-12.11sun.
11:00 →18:00

music :
nina persson / animal heart
petrolz / renaissance
cornelius / sensuous

iyamamikiko

photo by suzuki shizuka

“見立てる”楽しさ

最近、まわりでちらほら飲まれているのが中国茶。昔から中華料理店で白いポットで、でてくる ジャスミン茶は知ってたけど、これはちょっと違う。中国茶そのものを嗜むのだ。そのために茶会 をし、お菓子を考えたり、道具を揃えたりする。日本の茶の湯のように、多くの制約に縛られるこ となく、自由にお茶を楽しむことができ、何より美味しい。 今回紹介する、井山三希子さんもその魅力にはまったお一人。陶芸家である彼女の普段の制作は、 毎日の食卓に登場しない日はないというくらい、使いやすく、料理をさりげなく引き立ててくれる、 使い手の視線に立った器である。そして、そんな彼女が作る中国茶の道具は、やはり、生活器の延 長線上にあるように思える。少し特別な日と普通の日常̶ハレとケを行ったり来たりするような道 具たち。ある時は、ホットドッグプレートが、長いトレーになり、蓋碗のフタが豆皿になる。使い 手に“見立てる” 喜びを教えてくれる仕上がりになっている。 また、今回は、私たちの友人でもある中国茶道家の渡邊乃月さんがギャラリーにて、2日間だけ、 中国喫茶店を開店してくれるという粋なはからい付き。ぜひ、この機会に、美味しいお茶とお菓子 と器に酔いしれにお出かけください。

辻 和美


● 11月19日(土) 20日(日) 月乃音 中国喫茶店オープン
● 会場が狭いので、初日の18日はご来場の入店数を制限させていただくこともあります。ご了承ください。


井山 三希子 径歴
1965年東京生まれ。1990年瀬戸窯業訓練校修了。1992年愛媛県にて独立。
2006年東京都八王子に制作の場所を移し現在に至る。
石膏型にスライスした粘土を貼り制作する技法を一貫して続ける。現代の生活に自然と溶け込むフォルムや色、また、器の使いやすさには定評があり、多くの方々に愛される器を制作している。

8th exhibition
dansko

2016.10.21fri.-11.13sun.
11:00 →18:00

music :
angelo badalamenti / twin peaks (original soundtrack)
nirvana / mtv unplugged in new york
green day / dookie

dansko

photo by suzuki shizuka

dansko=デンマークの靴

dansko を履き始めて、7、8年になる。もともと、木靴などの丸っこい靴が好きな私に、dansko はまさにストライクゾーン。スタイルだけではなく、木靴より履きやすく、案外どんな服にも馴染 む力強いコーディネートの味方である。デンマークの靴という名前を持つこの靴は実はアメリカ、 ペンシルバニア生まれのブランド。 創設者の mandy cabot と peter kjellerup はもともとは、馬 の調教師で本人の故郷である、デンマークに馬を買いに行き、シンプルなデザインのクロッグスを 見つけたのがきっかけだったという。その靴はとても快適で、まわりの友人から販売を求められ、 20年間改良に取り組み今の履きやすいdansko に仕上がっている。 そして、そのdansko を日本に紹介し、今も日本のブランドディレクターを務めるのは荒井博子さ ん。彼女のdansko との出会いも自然な流れで面白い。アメリカはシアトルでウエイトレスのアル バイトをしていた彼女が疲れないからと勧め られ半信半疑で履き始めたのがdansko。最初は不思議な靴!って思ったそうだ。 その後、その履き心地に魅了され、友人と日本に紹介したいと、本社に出向き、その場で契約が決 まり、荒井さんの運命が大きく変わっていった。 「靴を恋人に送ってはダメだ、あなたから離れていきますよ!」と韓国の言い伝えにあるけど、 dansko は彼らを全然違う人生に連れて行ってくれたようだ。

辻 和美


● 手編みのカバーソックス「amine」の販売、受注も同時に行います。


dansko 径歴
1990年アメリカ・ペンシルバニア州で mandy cabot とpeter kjellerupにより創設。2004年から 米雑誌「footwear plus」のコンフォートウェアデザイン賞を9回受賞。履き心地の良い靴を作る傍 ら、環境保護やさまざまなボランティア活動など、企業としての社会的役割も多く担う。米国グリー ン・ビルディング協会から「エネルギーと環境に配慮したデザインにおけるリーダーシップ」の ゴールドを認定。

7th exhibition
ando akiko

2016.09.16fri.-10.16sun.
11:00 →18:00

music :
thelonious monk / thelonious himself
the rolling stones / let it bleed
clammbon / てん 、

ando akiko

photo by suzuki shizuka

日本のサロン

サロンとはもともとは、インドネシアやマレー半島の民族衣装である。マレー語で「袋」を意味し、 長さが1.5~2メートル、幅は1メートルほどの布を筒状に縫て身につけることでその名前が付いて いる。男女関係なく身につけることが出来、チェックやバティックの文様が可愛らしく、布好きな 私は、何枚か買って持ってはいるのだが、何が難しいかというと、身につけ方である、紐もなく、 余った布地を畳み込んで腰に挟むらしいが、何だかモタモタするのである。どうしたものかと思い あぐねていた時、明子さんのサロンに出会った。 その形は私が知っているサロンの中では一番コンパクトで、共布の紐が付いていた。着物の腰紐と 似た作りで、これがあると無いでは安定が違う。また、腰の周りの布地は、引っ張りに強い横布が 使われていたり、切り替えが伸び止めになっていたりと、細かい工夫がされている。最初は彼女自 身の日常着を作るつもりで、古い着物を解体していったという。つまり原型は一枚の着物からでき ていると知り、なんだか、とても嬉しくなってしまった。きっと、明子さんもどこかで魅力的なア ジアのサロンに出会い、心惹かれ、現代の日本女性の生活にどのように受け入れてもらえるか、自 分自身が実験台になり、あれこれ悩んだ形が今なんだろうなー。
明子さんは言う、「私のサロンは衣生活様式の装置。自分は生活に合わせ整理していっただけ、今 は身につけてくださる皆さんがサロンを進化させてくれてる」と。あくまでも謙虚なお言葉。いや いや、明子さん、スカート、パンツ、シャツ、アキコサロンとなる日も近いと思うよ。

辻 和美


● 9月16日(金) 安藤明子さんが在廊されます。サロンの着こなし、着付けの相談を承ります。


安藤 明子 径歴
1965年 兵庫県西宮市生まれ。
結婚後自らの衣生活について考え始め、古今東西の布を用いた年齢体型性別問わず、長く着られる
定型の衣服というコンセプトで、サロン(筒状のスカート)や上衣などを作り始める。
1998年10月 陶作家の夫・安藤雅信とギャルリ百草を開廊。
真木千秋、谷口隆、ミナ・ペルホネン、spologum、しょうぶ学園、nui project との
コラボレーションを続けている。

6th exhibition
lee gee jo

2016.08.12fri.-09.11sun.
11:00 →18:00

music :
suzanne vega / solitude standing
verbal jint / go easy
t.v.x.q / surisuri

lee gee jo

エメラルドの白磁

韓国に初めて訪れたのは、15年くらい前だったと思う。仁川空港に降り立つやい なや、飛び込んで くるハングルの文字とセラミックのように美しい女性たちの肌。飛行機でほんの2時間の隣の国な のに、ずーっと遠かった場所だ。この国のイメージをキムチと焼肉と思っている方がいたらそれは是 非、韓定食を食べていただきたい。テーブルに座るやいなや、用意される野菜のナムルの数々。10 皿くらいはすぐ用意される。メインの肉も魚もいらない、その小さなおかずだけで胃袋はすっかり満 たされる。友人の料理家のジウンさんは、韓国は肉より野菜の国、強い野菜とキムチの乳酸菌で女 性たちが綺麗なんだよという。ジウンさんの家に行って、ごはんをご馳走になる。そこでよく使わ れているのがギジョさんの白磁だった。韓国のおかずによく似合うエメラルドの白だ。もちろん、 即購入し持ち帰る。それから、その包容力と見た目からは信じられない頑丈さで、うちでは最も出 番が多い器になった。作家のアトリエにも2回ほど行った。大学で陶芸を教えながら、韓国の伝統 的な朝鮮白磁を職人とともに作る。野菜も作る。鳥も育てる。料理もする。キムチもつける。何も 特別なことはしないとおっしゃるが、それが特別だ。欧米のアートに憧れ、オブジェをつくっても みたが、そこに韓国人としての根っこを感じられなかったと言う。あら、同じ道を通っているんだ。 遠い国の彼方にとても親近感が湧いた一瞬だった。

店主 辻和美


● 8月12日(金) チェ・ジウンさんによる、韓国伝統の蓮の花茶とおつまみをご用意しております。

lee gee jo 経歴

1959年 韓国済州島生まれ。 
1981年 ソウル国立大学入学、82年 陶芸を始める。89年 修士課程修了。
1995年 韓国、安城にある中央大学校 芸術学部教授に着任。
1998年より、安城にアトリエを構え農作物を育て自然の様子を観察しながら、白磁の制作を行う。
展覧会は、韓国だけにとどまらず、日本、アメリカ、フランスなどのグループ展にも招待。

崔さんの韓定食ランチ

2016.08.13sat. - 14sun.   11:00〜 13:30〜
定員/各回10名 3,240円(ドリンク別)要予約

各回、定員に達しましたので、予約受付は終了いたしました。(8/4)

/galleryでのイ・ギジョさんの展示に合わせて、友人で韓国伝統料理の技術を持つ崔 智恩(チェ・ジウン)さんが器を使い、/shopで韓定食ランチを作ってくれます。またとない機会ですのでぜひお越しください。
※器の展示は/gallery、ランチの会場は/shopになります。ご注意下さい。
※お越しの際は、公共交通機関をお使い下さい。駐車場はお近くのパーキングをご利用下さい。

4nd exhibition
toranekobonbon

2016.06.10fri.-07.03sun.
11:00 →18:00

music :
moonrise kingdom / alexandre desplat
the book about my idle plot on a vague anxiety / toe
ピアノ/ 原田郁子

toranekobonbon

君にとって猫=人なのか?

「 絵は何故描くのか?」と尋ねると「趣味です!」と言い切った、その潔さにま た興味が湧く。描きかけ、消した後、途中が好きだという。完成までのプロセス、 仕上がらない美しさに魅かれるのか、彼女の作る料理とはまた違うところに位置 する中西なちおの絵。思い直して、ここでまた質問を一つ。「なぜ猫なの?」と いう問いに、「人間の代わり……かな?人間だと生々しいし……」そうか猫は彼 女の周りの友人の代わりなのかもしれない。Yさんだったり、Nさんだったり、 日常に起こる些細な出来事が猫に姿を変えて彼女の筆先からサラサラとこぼれ出 てるのかもしれない。
「 絵本は何故作ったの?」この質問は言いかけてやめた。たしか、私たちの共通 の友人と絵本を作る約束をしたのが数年前。仕上がる前にその友人が逝ってし まった。それが、どこか彼女の胸に刺さったままだったように思えたから。忙し い料理の仕事の合間に3冊の絵本を絞り出した、義理人情ど根性、それでいて人 や物への愛に溢れている、それがまさに中西なちおという人。今回は3冊の自費 出版本と原画の展覧会です。とても、待ち遠しい。

店主 辻和美


● 6/10・11はドリンクスタンド【BONBON】オープン
苺のシロップ、梅の砂糖漬け、清美オレンジの蜂蜜漬け、日向夏のレモネード、スイカとライム とミントのジュース季節のフルーツを使ったドリンクスタンドを2日間開店いたします。

中西なちお 経歴

1974年 生まれ 料理人
2007年~ トラネコボンボン主宰
2011年~ ホームページブログ「記憶のモンプチ」に毎日一枚動物の絵を更新する。
2013年~「 記憶のモンプチ原画展」として原画の巡回展覧会を行う。
2013年 絵本「Chat du coin et pas d'ailleurs(あるところの猫)」制作。'14,'15と引き続き絵本制作。
2015年4月 書籍「トラネコボンボンのお弁当」出版
終了した展覧会

3rd exhibition
spoonful

2016.05.20 fri. - 06.05 sun.
11:00 →18:00

music :
wouter hamel / nobody's tune
corinne bailey rae / corinne bailey rae
e.s.t. / seven days of falling

spoonful

photo by suzuki shizuka

大らかな北欧

お恥ずかしいことに、物を選ぶ仕事が、物を作る仕事と同じように、その人自身 がそこに鮮明に現れてくると考え始めたのは、ここ10年くらいなのだ。物を作 る人間からすると、ゼロから何かを生み出すことこそ全てだったのかもしれない。 ただ、これだけ世界中に新旧問わず物が溢れてしまい、たった一個のコップを選 ぶのにも疲れてしまいそうになる時、自分と趣向の近いお店の方の目により、一 度ふるいにかけられた物たちの安心感たるや!しかし、よく考えれば日本は、千 利休、柳宗悦、白洲正子など、物を作ることではなく、選ぶ目によって日本文化 をリードしてきているのでは?と思うこともある。 さて、今回紹介するのは、spoonful のおさだゆかりさん。彼女は北欧雑貨の専 門家である。年に3 回ほど買い付けにデンマークやスウェーデンに足を運び、 ヴィンテージ、アンティークなどを買い付ける。もともとは、サザビーという会 社でバイヤーを13 年間勤め、2005 年に独立し、spoonful を立ち上げた。「北欧 雑貨の中でも、選ぶ基準は何なのか?」と聞いてみた。やはり、結局、自分自身 の生活に取り入れて使いたいと思う物が彼女の軸だという。そうなるとやはり一 回りして選ぶ物に、その人となりが鮮明に現れてくるわけだ。 大らかで暖かい彼女の選ぶ北欧は、まさに、おさだゆかりさんでなくては出会え ない物かもしれない。 

店主 辻和美


おさだゆかり 経歴

1967年 山梨生まれ
2005年 spoonful 立上げ
2005年 東京 ギャラリーフェブ spoonful展
2010年 奈良秋篠の森ギャラリー月草 北欧展
2015年 神戸 taste & touch deco 北欧雑貨手帖展
終了した展覧会

2nd exhibition
fujita mayumi

2016.04.29 fri. - 05.15 sun.
11:00 →18:00

music :
stereolab / switched on・weather bound・giants are dying
little creatures / the apex
j dilla / donuts

fujita mayumi

photo by suzuki shizuka

大阪のビビッド

大阪に行く度、そのファッションはひと味違うと、いつも感心する。ヒョウ柄、パープル、ドット、ストライプ、金銀。柄に柄、柄にチェックと上級者クラスをドーンと自分のモノにしてらっしゃる。いつもの黒っぽい服の自分が霞んでみえてくる。身につけるモノは、その人に元気をくれる。大阪が生き生きと見えるのはそんなとこからかもしれない。 そして、藤田真由美さんは大阪を拠点に活動するバッグの作家である。自分でデザインして自分で作ります。たぶん、作ることと考えることを同時にするタイプで、人に任せることはできない作家だと想像している。もともとは、布地にチクチクと運針することが好きだったように思うが、彼女はそれだけで納まるような人ではない。現在は、平面と立体、色と装飾がバチバチと火花をあげているような作品を作る。だけど、凄いのは最終的にはシックリさせてしまうとこだ。まさに藤田マジック。 また、長く彼女を観察していると、頭の中が、バッグの形を重視した立体寄りの作品と、色や表面の装飾を楽しむ平面寄りの作品と2つに分かれてきたようにも感じる。今回、私からのお題「ビビッド!」は彼女を随分と悩ませてしまったようだ。私の中で大阪の彼女はそのままで十分に「ビビッド」だったのだが、彼女はどうしたら「ビビッド」になるか、相当苦労したみたいです。そういうわけで、今回は「ビビッド×ビビッド」が見れると思います。さあ、元気いっぱいもらいましょう!

店主 辻和美


藤田真由美 経歴

1971年 大阪生まれ
2003年 東京でtoucher 3days shopを開催
2004年 大阪Saji個展
2006年 奈良秋篠の森ギャラリー月草個展
2015年 京都ioプラスにて2の自転車バッグ展
終了した展覧会

opening exhibition
iwata keisuke

2016.04.01fri.-04.24 sun.
11:00 →18:00

music :
grace jones / nightclubbing
david byrne / the catherine wheel
tom waits / mule variations

iwata keisuke

photo by suzuki shizuka

岩田の宇宙

出会いは、白いぽってりとした急須、その動物のような温かみのあるフォルムに 一目惚れした。それ以来、福岡の工房に行く度に、何か連れて帰るようになっ た。今回、引きつけられたのは、手の中にすっぽり収まる小さな器だ。酒飲みの 岩田さんは、ぐい飲みと言って見せてくれたが、私には一点一点が全く違う表情 を見せてくれる宝石のようにみえた。好きな変化にはなかなか出会えないと言い ながら、岩田さんは今この窯の中で起こる、窯変にとても興味があるらしい。窯 変とは、火と釉薬(硝子+金属酸化物)の科学反応で起きる模様だったり色彩 だったりと、陶芸家にとっては、火の神様からのちょっとした贈物のようなもの かもしれない。過去には、「茶碗の中の宇宙」と例えられた国宝、曜変天目茶碗 も神様の力を借りている。窯変が最上級に美しい茶碗には、「星の輝き、瞬き」 などの意味の「曜」の字があてられるそうだ。 「あーだから、宇宙ね!」と、簡単に膝打したことを後悔した。もともとコンセ プシャルアート好きな私を、宇宙は果てしなく深い森に引きずり込みはじめた。 窯変どころではなくなり、茶碗の中に何で宇宙があるの?宇宙は時間も空間も天 地も網羅しているってどういう意味?無限って?もはや、ひとりビッグバン状態 に落ち入りかけた時、「さっ、ビールの時間だ」と岩田さんがプシュッと缶を開 けた。あー良かった。助かった。宇宙も茶碗も私には遠すぎる。大事なのは自分 の目と感覚を信じることだ。 「これ、好き。これ、嫌い」そんなとこから始めたい。

店主 辻和美


岩田圭介 経歴

1954年 福岡県添田町生まれ。1977年 日本大学芸術学部彫刻科卒業。
1978年 多治見工業高校窯業専攻科卒業。卒業後1983年まで瀬戸、河本五郎氏に師事、 独立。
2009年、2011年、2012年とLes journ仔s de la C屍amique Paris出品。
2013年 Salon C屍amique 14-Paris(コンテンポラリー陶芸展)。
2015年 佇まい展MUJI FORUM DES HALLES PLACE CARREEに出品。

schedule 2016

04/01(金) - 04/24(日) 岩田圭介
04/29(金) - 05/15(日) 藤田真由美
05/20(金) - 06/05(日) SPOONFUL
06/10(金) - 07/03(日) トラネコボンボン
07/08(金) - 08/07(日) factory zoomer
08/12(金) - 09/11(日) Lee Gee Jo
09/16(金) - 10/16(日) 安藤明子
10/21(金) - 11/13(日) dansko
11/18(金) - 12/11(日) 井山三希子
12/16(金) - 2017/01/09(月)