schedule 2018-2019

2018

12/15(金) - 01/14(日) dogs
01.19(金)-02.18(日) okabe masanori
02.23(金)-03.25(日) ando akiko
03.30(金)-04.22(日) mina perhonen
04.27(金)-05.27(日) iwata keisuke
06.01(金)-07.01(日) factory zoomer
07.06(金)-08.05(日) light years
08.10(金)-09.17(月) nakamoto junya
09.21(金)-10.14(日) matsubayashi makoto
10.19(金)-11.18(日) iyama mikiko
11.23(金)-19.01.06(日) tsukuda shingo

2019

01.11(金)-02.11(日) kim hono
02.15(金)-03.17(日) samulo
03.22(金)-04.21(日) girls
04.26(金)-05.26(日) toranekobonbon

※スケジュールは変更になることがあります。

33rd exhibition
tsukuda shingo

2018.11.23fri.-2019.01.06sun.

11:00→18:00
12月30日(日)〜 2019年1月2日(水)までお休みを頂きます。1月3日(木)から通常営業となります。

music :
paul mccartney & wings / venus and mars
the ska flames / real step
procol harum / grand hotel

“佃眞吾展"

photo by suzuki shizuka

Mokkiと木器

京都駅に迎えに来てくれた佃さんは、相変わらず、ボロボロのキャラバンで、独特の匂いのガラムタバコをふかしていた。「売れっ子なんだから、この車そろそろ変えたら?」という私の第一声に、「そういう問題じゃない、愛着なんだよ」と笑い合う。今日は半日二人で京都の祇園をブラブラ。久しぶりに会っても昨日の続きみたいに始められる友だ。ランチは白味噌汁の店。三軒ばかし、レトロな喫茶店をはしごして、ウインナーコーヒーを飲んだり、和久傳のお菓子をオーダーしたりと、最近終わったばかりの奈良、興福寺の献茶の立礼台の話を聞きたかったのに、「まあ、それはいいわさ」と、とんでもなく名誉のある仕事をしたのにもかかわらず、自慢するわけでもなく、俺にとってはあれもこれも同じと、普段から作っている木の器もとても大事に思っているのは確かだ。佃さんの仕事も大体2種類に分けられる気がしてる。今回の展覧会はそれを意識して2部構成にしてみた。名前をつけたいと、尋ねると、しばらくして「Mokkiと木器は?」と返ってきた。あー、なんかわかる気がする、ストンと落ちた。最後に聞いてみた、「物作りのゴールは?」って。「喜んでもらえたら嬉しいだけ、所詮職人や!」。と笑うその言葉があまりに正直過ぎて、あー、こりゃ、新車は無理だなと頭をよぎった。 辻 和美


● 佃さんの器で楽しむ京都の美味しいもの

一期:Mokki / 11月23日(金)、24日(土) 、25日(日) 京都の直珈琲、浅焼きエチオピアとチョコ

二期:木器 / 12月22日(土)、23日(日) 、24日(月) 日本のお茶、玉露と京都のお菓子  

佃 眞吾 経歴

1967年滋賀県長浜市生まれ。1990年京都にて家具職人として働く。1992年職人の傍ら「黒田乾吉木工塾」に通い木漆一貫仕事を学ぶ。1995年京都井口木工所にて家具・指物職人として働く。2004年京都市梅ヶ畑にて独立。2018年現在、同地にて制作。国画会工芸部会員。

32nd exhibition
iyama mikiko

2018.10.19fri.-11.18sun.
11:00 →18:00

music :
Michael Kiwanuka / HOME AGAIN
LOVE TAMBOURINES / Love Parade
various artists / WHERE, WHO, WHAT IS PETROLZ?

井山三希子展

photo by suzuki shizuka

蓋碗二号

井山さんとは、女性の作家同士ということで、何かと仲良くしてもらっている。主に相談にのる方だと思うが、わたしが。(笑)共通点がいろいろありまして、まず制作年数が長い。そして、少量生産の食器制作。年間の展覧会の数。個人工房で親方としての制作。ヘタウマとよく言われるけどプロ作家である。そしてプライベートでも美味しいもの好きの、買い物好きの、運動好き、ライブ好きの動物好きで、人に気を使いすぎて疲れてしまうところまで、良く似てる。女性、男性と性で区別するのはどうかな?って思うけど、やはりプロの作家で、一生やっていくとなると女性が少ない。体力的なこともあるのか、先にこんなことやってもあわないなーと簡単に予知できてしまうのか。まあ、どちらにしろ井山さんと私は生き残ってしまったというのが正しい。まあ、どこかで、この仕事で生きていくという、覚悟のスイッチが入ったんだろうね。 二人で作る蓋碗はこれが二型め。井山さんは碗の大きさや釉薬を、私は蓋の色や形を研究し直した。茶人の渡邊さんにも、二型めはもっと厳しいぞ!とアドバイスをもらいながら、二人とも真剣に作っているのだが、出来上がった物のゆるさにどうしたものかと苦笑い。LINEでスタンプを送り、ハートマークやニッコリマークはいっぱいつけても、私たち女子のやり取りは辛辣。でもそこが良い。夜中までそんなことをしながら作った蓋碗二号の出来はいかに。 辻 和美

● 10月19日(金) 月乃音 中国喫茶店オープン

井山 三希子 経歴 1965年東京生まれ。1990年瀬戸窯業訓練校修了。1992年愛媛県にて独立。2006年東京都八王子に制作の場所を移し現在に至る。石膏型にスライスした粘土を貼り制作する技法を一貫して続ける。現代の生活に自然と溶け込むフォルムや色、また、器の使いやすさには定評があり、多くの方々に愛される器を制作している。

31st exhibition
matsubayashi makoto

2018.09.21 fri.- 10.14 sun.
11:00 →18:00

music :
Holger Czukay / Cinema

松林誠展

photo by suzuki shizuka

絵のある生活

たまに訪れる実家の玄関や居間の絵が掛け替わっていると、「あー、まだ大丈夫だ」と、気持ちがポンと明るくなる。昔から、家の絵を替えるのは父の仕事のようだ。特にルールがあるわけではなさそうだが、春には菜の花、夏にはカンナ、秋には秋桜、正月には日の出や干支など、絵を飾るという小さな行為が、愛おしくも有難く、私自身がモノを考える時の一つの指標に、なっている気がする。
さっ、その絵についてだが、そもそも、絵を描くということは、私たち人間の本能的な欲求だったのではないかと思う。幼い子が字を習う前に、誰が教えなくても描き始める。それは誰かに何かを伝えたかったり、人を喜ばせたかったりとの純粋なコミュニケーションのスタートラインのような気がする。今回紹介する松林さんも本能的に絵を描くタイプだ。アトリエには書き殴られたGEKKOSOのスケッチブックが何十冊もある。決して、口が上手ではない彼が、絵でもって話しをしてくれているような気持ちになった。多くの人は、成長するにつれ、頭に知識が詰め込まれ、絵を描く必要がなくなる。それと同時に感情表現のスイッチの感度も鈍くなっていく気がする。まさに、うちの父は理系で、エンジニアで、すごく無口で、人に「ありがとう」も「ごめんね」も云えない人だ。ただ、家の絵が秋桜に替わっているのを見ると、「今年も半分終わったね」みたいな声が聞こえるのだ。 辻 和美

同時開催:9月21日(金)〜10月14日(日)ミナペルホネン金沢店にて「赤木と松林と。」展

松林誠 経歴
1962年 高知県高知市生まれ
1986年 創形美術学校研究科版画課程修了
2000年 パリ国際芸術会館に一年間滞在し活動
2003年 セブンデイズホテルプラスのアートワーク

30th exhibition
nakamoto junya

2018.08.10fri.-09.17mon.
11:00 →18:00

music :
music : 武満徹/ギター作品集成
大萩康司/ EL ABRAZO
福田進一/ Cancion Mexicana

ライトイヤーズ展

photo by suzuki shizuka

無国籍で無世代で

「もし東洋陶磁美術館に行ってなかったら、焼き物、続けていなかったかもしれんなー」と中本さん はいう。そう言われたら、行かないわけにはいかないじゃない。好きな作家のおすすめは、急に見 たくなるもんだ。関西出張の時間を割いて行ったその美術館には、高麗、朝鮮時代の朝鮮、中国陶 器を中心にした安宅コレクションを軸に4000点が収蔵されているらしい。たっぷりと覚悟を決めて いったが、なんと、これが、フランス宮廷、西洋磁器の展覧会の真っ最中で、朝鮮陶磁は一部屋に 小さくまとめられていた。 これでもかという、技巧的な装飾技術と完全に計算尽くされたシンメトリー型。 人間が作り出した モノなのに人間を拒むような神々しい西洋器物に対して、トロンと溶けそうな灰白色の肌、どんな 食べ物も人も受け入れてくれそうな、どこまでも大らかな朝鮮の器。土が持つ揺らぎを最後は火の 神に委ねる、そんな薪窯による仕事に中本さんは魅せられたのだろうか?しかしながら、決して彼 の仕事はそれらの写しではない。優しさゆえに、いろいろなことに悩み、翻弄され、行き着いた彼 なりの形がそこにはある。日本のモノとも、朝鮮のモノとも、西洋のモノとも言えない、確かに、 今を生きる頑固で、ちょっと不器用な男の作るモノだ。自分自身の形ーそれはボンヤリと見えたり、 隠れたりするものだ。ただそれをどこかで感じていたくて作り手は、作り続ける。 辻 和美



● 中本さんの器を使ってみませんか?いつでもお好きな時間にサーブします。
・8/11(土)、12(日)、9/1(土)、2(日)マグカップでコーヒー500円
・8/18(土)、19(日)、9/8(土)、9(日)蓋物でアイスクリーム 500円
・8/25(土)、26(日)、9/15(土)、16(日)アフガン皿でスープとバケット 1000円

中本純也 経歴
1967年 大阪府生まれ。 素朴な焼物に憧れて、1999年より和歌山県龍神村にて、薪窯による器づくりをはじめる。 現在は磁器を薪窯で制作。

29th exhibition
light years

2018.07.06fri.-08.05sun.
11:00 →18:00

※7/7(土)、8(日) 12:00 → 17:30

music :
Music of the Rain Forest Pygmies
The Pygmies of the Ituri Forest
Music of the Ituri Forest

ライトイヤーズ展

photo by suzuki shizuka

編んだモノ ーfrom light years

光が一年間に進む距離、つまり遥か彼方という意味を持つ「light years」。 実際のところ、実働部隊は二人。前田淳氏と細矢直子さん。それを支える数人のスタッフだけ。 アパレル関係の仕事でインドに行ったのがきっかけで、現地の布地や家具などの衣食住に纏わる道具に魅了され、 福岡市内に、現地のモノを紹介する店舗がこの夏で3軒めになる。 特にベニワレンというモロッコのラグやインドのラリーキルトなどは、 既に彼らの代名詞のようになってきている。スタートはいつも、自分たちの住空間から、 ラグが欲しい、カゴが欲しいだが、実際のところ、この二人の仕事はアジアを股にかけた、 引っ越し業者のようだ。重い、かさ張る、古い、もしかしたら、暑い……。 それでも続けるのは、やはりモノや人との思いがけない出会いだという。 モノを通してヒトと出会う、ヒトを通してモノと出会う。 そんなモノの中には美術館や博物館にあってもおかしくないモノも、ちらほら。 作り手がいなくて技術が継承されないモノも少なくはない。 「お店の良いところは、どんな珍しいモノも触ったり、持ったりできる、現代の作り手さんたちが、 参考にしてくれたり、刺激を受けたりしてくれたら嬉しいですね。 あーでも、そんなカッコ良く書かないでくださいねー」。 と、どこまでも優しい人たち。今回は「編んだモノ」というテーマに絞りアジアやアフリカの籠、 ゴザ、布を集めてもらいました。その世界観を表現するためにいろいろなイベントも考えています。 ぜひ足をお運びください。 辻 和美



7月7日(土)・8日(日)10時〜/18時〜 計4回「編む茶会」渡邊乃月さん 定員8名(/galleryにて)
7月7日(土)11時〜/16時〜 計2回「シルクロードの起点 西安料理教室」渡辺康啓さん 定員10名(/shopにて)

light years 経歴
「strange to meet you」を合言葉に旅先での縁が赴くまま活動中。 福岡を拠点にモロッコのラグやインドのキルトなどを扱うショップ「light years 」と 世界中のカゴを集めた「1834(かごや)」を展開。 今夏に新たなお店をオープン予定。www.light-years.jp

28th exhibition
factory zoomer color

2018.06.01fri.-07.01sun.
11:00 →18:00


music :
JEJUNG & YUCHUN / COLORS ~Melody and Harmony~
Cyndi Lauper / True Colors
EGO-WRAPPIN’ / 色彩のブルース

ファクトリーズーマ color

photo by suzuki shizuka

color

「color」という作品を作り始めて今年で8年になる。最初の展覧会は東京、吉祥寺にあるfèveというギャラリー。その後、高知、北海道、多治見、福岡と、お呼びがかかれば、どこへでも巡業している。 もはや、(自分で言うのはなんですが……)代表的なシリーズのひとつだ。当時、色を使って作品を作りたかった私は、どんな色を使うかにあまり、興味がなかった。というか、決める事が出来なかった。悩んだあげく、それならば、全ての色を並べてみよう!私自身が色を選択する必要はないのかもしれないと、考え直してから、いろいろなことがまとまり始めた。ひとつの大きなテーブルに並べた色のコップには、人種、容姿、生い立ちなどで、差別や偏見がないようにと願いを込めた。そして、並んだコップを眺めているうちに、色についてあらためて、学ぶことになる。当たり前と言われそうだが、考えても見なかった……。色は、他の色によって見えかたが違ってくる。引き立てあっているんだと、なんだか人間も同じだ。自分一人で生きているように意気がっていても、まわりの多くの人に支えられ、引き出されて一人一人が、今そこに在るのだと。  辻 和美

◯5/31(木)に内覧会を開催致します。

辻和美 経歴
1999年金沢に、ガラス工房 factory zoomer を設立。ガラス器の新しいスタンダードを目指し、デザイン・制作を行う。その後直営店 factory zoomer / shop をオープン。2009年金沢市文化活動賞。2010年〜2016年まで生活工芸プロジェクトディレクターを務める。2016年 factory zoomer / gallery をオープン。

27th exhibition
iwata keisuke

2018.04.27fri.-05.27sun.
11:00 →18:00


music :
fela ransome-kuti and the africa'70 with ginger baker / live!
robert johnson / King of the Delta Blues Singers, Vol. 2
憂歌団/知ってるかい!?

岩田 圭介

photo by suzuki shizuka

普通はあたりまえではない

「あと何回穴窯を焼けるかはわからん、もう10回は無理だな」と、つぶやく岩田さんを見て、限りがあることを改めて、思い知らされる。いつもあたりまえのように、そこに在る湯のみ、急須、ごはん茶碗など、私の生活の底辺部分をぐっと支えてくれているモノたち。それの一つ一つに作り手がいて、悩み、考え、時にはラッキーな偶然で生まれてきている。日常使う道具において、人がそうやって、きちんと関わったモノは、あたりまえの顔をして、決してあたりまえではないのだ。普通の顔をしてくれている特別なモノであり、その代わりはあるようで決してない。 岩田さんもそのようなモノをずっと生み出してきた作家のひとりだ。私の家にも15年前出会いとなった急須や、もはや取っ手が取れてしまっても使い続けるマグカップなどお世話になっている。もともとは機能があるものより、土による彫刻に魅かれて陶芸を始めた。だからなのか、最近の岩田さんは、その辺に転がっていそうな、なんでもない石コロのようなものを楽しんで作っているようだ。自我を遠くに突き放し、全く人間がコントロール出来ない火の神に最後を託すわけだ。「もうここまで来たらこれしか残ってない」と半分冗談、半分真剣に語る。確かに、自然がもたらす美しさや偶然が引き起こす造形の面白さには敵わないことはわかる。ただ、穴窯から出てきた焼け焦げた土の塊の、一つ一つが自然石のようで、岩田さんがしっかりとそこにいる。だから私たちは好きなんだけど……いやいやまだ先は長いですよ。

辻 和美


● 4月27日(金)・28日(土)は、謝 小曼さんによる中国茶喫茶がオープンします。



岩田 圭介 経歴
1954年 福岡県添田町生まれ。1977年 日本大学芸術学部彫刻科卒業。
1978年 多治見工業高校窯業専攻科卒業。卒業後1983年まで瀬戸、河本 五郎氏に師事、独立。
2009年、2011年、2012年とLes journées de la Céramique Paris 出品。
2013年 Salon Céramique 14-Paris(コンテンポラリー陶芸展)。
2015年 佇まい展 MUJI (Paris, NY, Milano) 出品。
2016年 Michiko & Keisuke IWATA展 at Galerie Mercier et associés (Paris)

26th exhibition
minä perhonen piece,

2018.03.30fri.-04.22sun.
11:00 →18:00


music :
つくる音

“安藤明子”

photo by suzuki shizuka

ネガティブをポジティブに変える力

「ここはいつか、お花畑にしたいですね。」 皆川さんがminä perhonenを金沢にオープンさせて一年が経とうとしている。その金沢店の脇に隣接した土地があり、誰もがまさに、駐車場にしたらと考えるスペースだ。私は耳を疑ったが、すぐに、あーこれが皆川流だと悟った。新しい店が、近所の方々に何か、迷惑をかけてしまうかもしれない、そんな時に少しでも癒されるスペースがあればいいという、遠回りのように感じるが、長い目でみた、人と人とのコミュニケーションの仕方であろう。 ネガティブをポジティブに変える力を良いデザインは持っていると、皆川さんは話してくれる。今回、展覧会をしていただくpiece,というプロジェクトも、普段の服作りからでてくる残布を集め、別の魅力を持つ物に再構築している。普通なら、ゴミになってしまうような(ネガティブ)な要素を素材として生かし、世界で1点しかないオリジナルな商品(ポジティブ)に作り変えていく。残布利用を全く感じさせないところが凄い。むしろ、後で私たちは、その試みを知り、より嬉しい気持ちになる。皆川さんは衣類を作っているのではない、衣類を通して、社会を作っているのかもしれないとよく感じることがある。既成のファッション界の仕事の有り様に早くから疑問をもち、利益最優先の物作りが人間に、果たして幸福をもたらすのか?それよりも一枚一枚を大事に長く着てもらう方法や、作り手、売り手、買い手が、みな笑顔でいられるプロダクトとはどのようなものなのか?皆川さんの描いた点はゆっくりと、線になり、面になり、確実にこの国を変えていくと信じている。 辻 和美

辻 和美


● 3月30日(金)〜4月1日(日)は、とらやの羊羹「光雲」(皆川さんデザイン)と、羊羹に合わせた櫻井焙茶研究所のお茶をご用意しております。



minä perhonen(ミナ ペルホネン)経歴
1995年、デザイナー皆川 明により設立。 自然の情景や社会への眼差しから想像を広げ、丁寧につくり進めたテキスタイルデザインを特徴とするブランド。衣服に始まり、インテリアへとデザインの幅を広げながら、日々のための長く続くものづくりを目指す。 金沢21世紀美術館や東京スカイツリーなどのユニフォームも手がける。www.mina-perhonen.jp

25th exhibition
ando akiko

2018.02.23fri.-03.25sun.
11:00 →18:00


music :
glenn gould / J.S.Bach Invention No. 1 in C Major, BWV 772
glenn gould / J.S.Bach The Six Partitas No. 4

“安藤明子”

photo by suzuki shizuka

セルフカバー

安藤明子さんといえば、今はサロンの作家さんという印象が強くあるかもしれない。サロンは筒状のスカート(腰衣)のことで、インドネシアやマレーなどのアジア全般で日常着としてはかれている。明子さんは、この民族衣装を日本人に合うようにサイズや紐など、最低限ミニマムなデザインを施し、あとは、オリジナルな着付けや、重ね着を取り入れ、「百草サロン」として発表し、制作を続けている。特にガラッと大きい変化は好まないようだが、サロンにもバリエーションとマイナーチェンジがある。ある時は、プリーツを施したり、またある時は袋状になっていたりと、定型を保ちつつ、何らかの小さな変化がある。 また、minä perhonenやSPOLOGUMなどの洋服ブランドやデザイナーとのコラボレーションも明子さんならではの、人を楽しませる仕掛けだ。しかしながら一番の発見は、明子さんの衣服のほとんどの型は既に22年前に完成されているということだ。「新しい?ん?新しくない?あーセルフカバーのイイのがある」。と見せてくれたのは、小幅地の反物を余すことなく作られた2018年版の上衣であるその当時から残り布を出さないという精神は、まさに明子さんらしい。そして、そのコンセプトが、上衣として成立するギリギリの形を作りだしている。これはもう、どこもそぎ落とせませんね。22年前の型は、新しい布地により再び息を吹き込まれ、潔く、凛と生きたいと願う私たちに力を与えてくれる気がした。

辻 和美

●2月23日(金)14時〜安藤明子さんによる、基本の着付けや季節に合わせた着方のレクチャーを行います。



安藤 明子 経歴
結婚後、自らの衣生活を模索する中で、「古今東西の布を用い、年齢体型性別問わず長く着られる定型の衣服」というコンセプトでサロンや上衣などを作りはじめる。1998年ギャルリ百草開廊。真木千秋、谷口隆、kitta、minä perhonen、SPOLOGUM、PLAIN PEOPLE、mon Sakata、舞良雅子、トラネコボンボン、atlier Une placeなどとコラボレーションを行っている。「安藤明子の衣生活」(主婦と生活社 / 2006)「美と暮らし」(ラトルズ / 2010)KIMAWASHI(mon Sakata / momogusa)」平澤まりこ画(百草 / 2011)「#百草サロン|それぞれの衣生活」(倉敷意匠計画室 / 2015)

24th exhibition
okabe masanori

2018.01.19fri.-02.18sun.
11:00 →18:00


music :
VOICES -CHANT FROM AVIGNON- / The Benedictine Nuns of Norte -Dame de l Annonciation
casa de morar / renato braz

“オカベマサノリ”

photo by suzuki shizuka

身につける小さな神様

多治見に住む友人の首にいつもある、華やかではないけど凛とした印象のビーズの首飾りが いつも気になっていた。時には赤い細く編んだ糸にクリスタル、時にはベージュの糸にカーネリアンと、 彼女の装いにぴったり寄り添う装飾品だ。作家はオカベマサノリさん。その後、展示会を待ち、駆けつけた。 そこにあるのは、何百という古代ローマやペルシャなど、千年以上前に作られたガラスや石や金属のビーズだった。 なにより楽しいのは、自分にあった石とストリングスを選び、その場でオカベさんが、あーでもない、こーでもないと、 話をしながら、自分にあったモノを仕上げていってくれる。わたしは、首より、腕や指に何かをつけている事が好きで、 赤い糸とカーネリアンによるブレスレットを作ってもらった。その日から左腕に付けて、 ほとんど外していない。古いビーズには、邪を払い、身を守ってくれるお守りのような効果があるんではないかと、 勝手に信じ、その上、願までかけている。私にとっては、身につける小さな神様みたいな存在になっている。

辻 和美

●1/19(金) ~ 21(日)・23(火)・2/15(木) ~ 18(日)のオカベさん在廊中は、オリジナルをお仕立てして下さい ます。



オカベマサノリ 経歴
1964 年、福岡生まれ。30 代からアクセサリーを制作。
1300 年前に作られたチベットのDZI BEADS(ズィービーズ)と出合ってから、古い時代のビーズに魅せら れていく。おもに1000 年以上前に作られた古代のビーズを使って、アクセサリーを制作。昔の人たちが自 分の印(しるし)のようにビーズを身に着けていたように、日々の暮らしに寄り添うアクセサリー作りを心 がけている。福岡県浮羽在住。

23rd exhibition
dogs

2017.12.15fri.-2018.1.14sun.
11:00 →18:00


music :
bonnie pink / 犬と月
leyona / ワンちゃんのようにね
ego-wrappin’ / 老いぼれ犬の口笛

“dogs/mitani

写真作品 作:三谷龍二 / 素材:木、漆
photo by suzuki shizuka

犬が教えてくれたこと

自分の犬と暮らし始めたのは30代半ばだった。それはペットショップで売るには、ちょっと、大きくなってしまった、自閉症のゴールデンレトリバーだった。正確には、母犬や兄弟と早く離されて、そうなってしまったのだ。いまでこそ、日本でペットショップは減ってきたと思うが、まだまだ、ペット後進国であることは間違いない。アメリカやヨーロッパでは、ブリーダーから犬を購入するのだが、飼う側の面接があり、一人暮らしや収入により、売ってもらえない話はよく耳にする。話は戻るが、その自閉症犬に私はアルテという名前を付けた。イタリア語でアートという意味だ。最初、アルテには、感情がなかった。遊びを知らなかった。躾もされてないので、おしっこを部屋中にしまくった。躾教室にも一緒に通ったが、一番の運動音痴で、投げたボールを口でキャッチせず、前足で受け止めようとする有様。他の犬に会うと、すぐ戦いを挑みに行ったりと、初めて飼う犬にしては、手強すぎると、友人たちに言われ、たしかに、自分も疲れ果てていた。そんなある日、仕事から帰ると、アルテがこっそり私のベッドで丸く寝ていた。「ここで寝てはダメだよ」。と教えた場所だったのだが、あまりに飼い主の帰りが遅く痺れをきらしたのか、帰ってきた私の顔を「ごめんなさい」と言うようにペロリと舐めた。初めてだった。私にも守るものが出来たんだと思わずワシワシしてしまった。 アルテが亡くなったのは、1月2日。癌だった。忙しい夫が休みの間に亡くなって、お葬式まであげれるという、あいつなりの計らいだ。私ときたら、「ありがとう」と「ごめんね」を繰り返すばかりだった。育てていたつもりが、人間として必要なことを数え切れないくらい学んだ。そして、最後は身をもって「死」を教えてくれた。生きていると、手放していかなくてはいけないことがたくさんある、それが愛して愛してやまぬ物や事や人や犬でも。

辻 和美

● 来年の戌年に因んで、普段から交流のある作家に、思い思いの犬を作ってもらいました。12月 15日(金)は、トラネコボンボンさんのワンコインドリンクをご用意してお待ちしています。



作家と経歴

石原稔久(陶芸家)
1973年福岡県直方市生まれ。1996年武蔵野美術大学彫刻科卒業。1998年茨城県笠間窯業指導所終了。 2000年福岡県宮若市にて薪窯築窯。2011年自作の文・人形の絵本冊子を制作。2014年森本千絵ウエディングディスプレイ制作。 ほぼ日刊イトイ新聞カレンダー2015デザイン。現在は展覧会を中心に活動中。

伊能一三(漆芸家)
1970年生まれ、東京藝術大学卒業。東京藝術大学大学院修了。金沢卯辰山工芸工房にて研修。現在、金沢市在住。 漆という伝統素材を用い「かべのとも」「へいわののりもの」と題した彫刻作品を制作。 乾漆でつくられた「へいわののりもの」は、愛らしい表情でありながら、その立ち姿は凛々しく仏像のようである。

内田鋼一(陶芸家)
1969年生まれ。愛知県立瀬戸窯業高等学校陶芸専攻科修了後、 東南アジアや欧米、アフリカ、南米など世界各国の窯場に住み込み修行を重ねた後、1992年に三重県四日市市に窯場を構え独立。 国内外で精力的に発表。2015年三重県四日市市に、明治~昭和時代の萬古焼を集めた「BANKO archive design museum」を開館。

加倉井秀昭(ガラス作家)
1970年東京生まれ。1996—1998年東京ガラス工芸研究所卒業。2000年~現在、ガラス制作請け負い業ギャファーとして活動開始。 2007年~現在、女子美術大学非常勤講師。2015年~長野県富士見町にScratch&noise設立。

金森美也子(ぬいぐるみ作家)
古着や服地のハギレ、靴下や手袋を素材にしたどこかユーモラスな大人向けのぬいぐるみを制作する。

キムホノ(陶芸家)
1958年愛知県瀬戸市生まれ。27歳の時に初めての個展。2013年 factory zoomer にて展覧会。

トラネコボンボン(料理人)
1974年生まれ。2007年よりトラネコボンボンを主宰。旅するレストランと称して店舗を持たず、 イベントレストランとして穀物や野菜を中心に季節や場所、テーマに合わせ様々な国の料理を提案する。

橋本靖代(デザイナー)
1964年東京生まれ。文化服装学院デザイン専攻ニット科卒業。 糸商、アパレル会社にてデザイナーとして従事。2007年にn、2008年にn100を大井幸衣氏と立ち上げる。 個人活動として「ys」手編みのニットプロダクトを2007年にスタートさせ、編み続けている。

三谷龍二(木工作家)
1952年福井市生まれ。1981年松本市に工房PERSONA STUDIOを設立。それまで家具中心だった木工に、 普段使いの器としての新たな分野を開く。 同時に、積み木や薬缶など生活風景をモチーフにした親密性の高い絵画や立体作品も制作する。

(敬称略・五十音順)

22nd exhibition
kim hono

2017.11.10fri.-12.10sun.
11:00 →18:00


※下記の時間帯は、花教室のためご覧いただけません。
11/14(火)11:00-14:00
11/15(水)11:00-14:00

music :
浜田真理子 / mariko live ~月の記憶~ 2002.11.9 at bunkamura theatre cocoon
浅川マキ / 裏窓

“kim

photo by suzuki shizuka

自分GA自分DE ARERUNARA

以前、キムホノさんに、李朝写しを展覧会のテーマにお願いしたことがあった。技術的に高い腕をお持ちだと聞いていたので、どんなモノが出てくるかとても楽しみにしていたのだが、そこに生まれた作品は、どこから見てもキムホノそのもので、私の想像をはるかに裏切ってきた。この人はいったい・・・・・・。謎が膨らみキムホノ愛が深まった。それからは、一年に一度は工房に伺い、ご飯をご馳走になり、テーブルに出てくる器に目がハートになっている。この方の手から生まれるモノは、陶器だろうが、料理だろうが、全てキムホノで満たされている。私が一番目指す、でも成れないアーティストだ。何を作らせてもその人自身になる、器用なようで、一番不器用な人。どんな小さな展覧会でも、必ずや、全て新作を作って発表するという彼のスタイルに、魂の強さを感じずにはいられない。李朝写しなどを頼んだ私がどんどん恥ずかしくなってきた。既に世の中で美と認められたモノを再制作すれば、人の目には優しいであろう。音楽と同じで、カバーアルバムは、人の耳に馴染みがある。ただ、常に新しいモノを生み出そうとする情熱に出会った時、人の心が大きく揺さぶられる感じ、これを忘れずにいたいと思う。キムホノは、自分自身への教訓でもある。 

辻 和美

● 11月14日(火)・15日(水) 花人 杉 謙太郎さんによる、キムさんの壺を使った「花教室」を/galleryにて開催いたします。 →詳しくはこちら

●/shop(犀川沿いのお店)では、キムホノさんのお皿の展示販売を同時開催致します。

kim hono 経歴
1958年 愛知県瀬戸市生まれ。 
27歳の時に初めての個展。
2013年 factory zoomer にて展覧会。

21st exhibition
krank

2017.10.13fri.-11.05sun.
11:00 →18:00

music :
federico durand / el libro de los arboles magicos
marionette /ぽるとがる幻想
yuko ikoma / esquisse

“crank”

photo by suzuki shizuka

人を想い、創る人

福岡に行ったら、必ず行く場所は?と聞かれたら迷わず、krankと答える。白い重たい扉をそーと開けると、客はもうどこか不思議の国に迷いこんだアリスと化する。徹底して、私たちを異空間に連れ込み、外のことを忘れさせ、その場にある古い家具や小物に没頭させてくれる。そのうち、紳士風な兎が出てきて、二階にある別のショップmarcelloへの行き方を教えてくれる、言われた通り進むと、案の定、穴の中に迷い込み、出口には天然パーマのもう一匹の兎が待ち構えているという仕組み。何度も何度もこの兎の兄弟の罠にはまってきたことだろう。 でも性懲りもなくまた行く。そして、また行く。 このクランクとマルチェロは、まさに藤井兄弟のライブ会場だ。決して楽器を弾いたり、演技をしたりというのではないが、その場所は、空間、ライティング、ヨーロッパ各地で集められたモノ、衣類、そして、そこにいる二人も含めて、全て徹底したプロ意識のもと独自の世界観を演出してくれている。ヨーロッパ各地に出向き、古い家具などの買い付けを年間5、6回。引越し屋と自分たちで笑って話すが、それを13年やってきている。続けることで、多くの信頼も得てきただろう。そう、彼らの作る場所は、表現などという素人臭い言葉ではなく、完全に結果を見据えた演出である。客である私には、それがとても気持ちよいのだ。舞台裏や楽屋を見たくないというと嘘になるが、敢えて幕が開くのを毎回待ちたい。必ず期待を超えてくるから。

辻 和美


藤井健一郎 経歴
福岡で弟の藤井輝彦と一緒にkrank(アンティーク家具店)とmarcello(衣類店)を設立、運営。東京での個展をはじめ全国各地でライブステージ演出や、ギャラリー活動、プロダクト等のデザインなども行う。年間5〜6回、フランス、ベルギーを中心にヨーロッパ各地に買い付けに出向く。 http://www.krank-marcello.com

20th exhibition
yamaguchi kazuhiro

2017.09.15fri.-10.09mon.
11:00 →18:00

music :
ryuichi sakamoto / 05 karl bohm / mozart best 1500 gidon kremer / the sonatas and partitas for violin solo

山口和宏

photo by suzuki shizuka

5ミリに切り揃えられたミネストローネ

福岡県うきは市吉井町、博多からのんびり運転して1時間半くらいのところに山口さんのアトリエがある。お昼にいらっしゃると思ってと、だして下さったのは自家製ミネストローネと丸パン。心のこもった一食をご馳走してくださった。印象に残ったのはそのミネストローネの野菜たちが全て5ミリの立方体に切り揃えてあったこと、なんでも鍋に放り込むちゃんこ鍋スープとは全く違い、丁寧な暮らしが、食べ物からも感じ取れたのを覚えている。 山口さんは、社会性が全くなくて、会社とかに勤められなくて…と、時々おっしゃるのだが、こういうところが反対に難しいのかもしれないとその時ふと思った。会社は人と人が摩擦しながら、うまくハマるところを探し、ある意味、妥協しあう場所だ。仕事においては、たまに取る100点ではなくて常に75点が必要。そう、野菜を5ミリに切り揃える場所ではないかもしれない。でもそんな山口さんだからこそ、作り上げてこれたのが、今の彼の城なのだ。木でモノを作ること、パンを焼いたりなど家事をすること、子供との時間を楽しむこと、家族でお出かけしたりすることが、全て山口流の生活という一本の線の上にある。カッティングボードやカトラリー、椅子などのアイテムはいつも山口さんの暮らしを代弁してくれている。社会性がなくて…とおっしゃる彼の顔は、喜んでいるようにみえたのは気のせいではないと思う。

辻 和美


●9月15日(金)13時〜、16日(土)11時〜珈琲焙煎家オオヤミノル氏がコーヒーを淹れてくださいます。 山口さん手づくりの丸パンもご用意します。


山口和宏 経歴
1956年生まれ。高校卒業後、いくつかの職を経て、家具工房に勤める。 1986年に30歳で浮羽町の山中で家具製作をはじめる。 1995年、工房と住居を吉井町にかまえ、トレーやカッティングボードなど小さな木工品を作り始める。 展示会を中心に制作を続けている。暮らしの中で、特別に主張することなく何気なく使い続けてもらえるような、木の道具や家具を制作。

19th exhibition
marobaya

2017.08.18fri.-09.10sun.
11:00 →18:00

music :その場の音

マロバヤ

photo by suzuki shizuka

服とは?

服とは? もともとは、人間の身体を外敵や天候の変化から守ることから始まり、次第に、異性の気をひくために着飾るものとなり、さらには、自分たちの属性を示し、アイデンティティーを表すものになり、個人の自己表現の手段にもなっている。現代は、服から、その人の情報を得ることも少なくない。 だが、marobaya の二人が生み出す服は、その逆を示唆しているように思うことがある。 形は、まさに現代人の服の原型。シャツ、tシャツ、セーター、パンツとどれをとっても、シンプルで、吟味された素材の良さが滲み出ている。 そして、このような服を作りながら、その展示方法が、彼らのもう一つの面を見せてくれる。 以前も、どこかの会場に行くと、服が床に洗濯物のように積み上がっているのだ。 サイズも形も自分自身で探して自分の一着を見つけろ!と言わんばかりだ。 ブランドを立ち上げ、14年め、だというが、ほとんど同じものを作り続けているし、あまりアイテムも増えない。 服に個性を頼るのではなく、服は添え物であり、主人公はあなたなのです。 自分自身をきちんと磨いていないと、本当は着れない服かもしれないな、とドキっとする。 または、今のファッション業のあり方に、彼らなりにモノを申しているようにも見える。 何て言うと、必ず、首を横に振る、イヤイヤそんな大それた。みたいに。 ただ、自分たちの服が、長く着続けられ、原型を保たないくらい、その人の一部になってしまっているような出会いをすると率直に嬉しいという。 やはり時代とベクトルは逆、そしてそれが本当は正しい。なんて会話の後、久しぶりの新作をサラッと見せてくれた。 いやいや、良い良い、今言った理屈がどうでもよくなる瞬間だ。

辻 和美


marobaya 経歴
2003年ごろから、ふたり(上村晴彦・木村勇太)の気になるところに行ったり、ジャンルを問わずいろんな話をしたりするようになる。ひとはなぜ衣服を着るのだろう。その後、衣服と布製品にまつわる活動を少しずつはじめる。纏(まと)う、巻く、重ねる、結ぶ、ぐるぐるする、ひらひらする、ぴょこんとする、をつくっている。

18th exhibition
jurgen lehl

2017.08.4fri.-08.13sun.
11:00 →18:00

music :
Benedicte Maurseth , Asne Valland Nordli / Over Tones
sylvain chauveau / nuage
Adolf Wölfli / Analysis Of The Musical Cryptograms | The Heavenly Ladder

jurgen lehl

photo by suzuki shizuka

ヨーガン レールが残したもの

ある日、ヨーガンが残した石が沢山あるのだけど、その展覧会をやらないか?と連絡をいただいた。確か、ヨーガンさんは三年前、ご自宅のある石垣島で事故に遭い、亡くなられたと聞いているが、その後も、海辺で拾い集めた漂流物(主に、プラスティックのゴミたち)を用いた照明器具などを美術館で展示発表し、今もなお、活動を続けているようだ。 さて、さっそく、その石群を見せていただいた。これ全部ヨーガンが集めたの?とまずは、率直な感想。インドの小さな村の河原で、灼熱の太陽の下、背中を丸め、何かに取り憑かれたように1日拾っていたという。ラタンプール(貴重な石の村)にあるナルマダ川では瑪瑙の小石がザクザクとあるらしい。ただ、その中でも彼の御眼鏡にかなう小石は少なく、日本に持ち帰られた小石たちは、特待生クラスだ。(これが今回の展覧会のメインなのだけど・・・うれしい。) 持ち帰った石を眺め、ヨーガンさんはいったい、何を考えただろうか?新しい美と出会い、ニヤニヤしていただけだろうか?いやいや、テキスタイルデザイナーでもある彼は、自然が創り出す完全な美を目の前に、作ることが嫌になってしまったかもしれない。なぜ、また新しいモノを生み出さなくてはいけないかと葛藤したかもしれない。ご自身の著書の中で、「かないっこない」と、言い放たれているのがとても印象的だ。人間の愚かさ、弱さ、それでも足掻く業の深さ、そんなことをブツブツと呟きながら、石垣の浜辺で今度は、プラスティックを拾い始めたのかもしれない。小さな石の圧倒的な美を知っているヨーガンさんだから、人間によって汚染されていく自然を守りたいと思ったのだろう。ふと考える。ヨーガンの残したモノは石とプラスティックなどではない、その志とそれを伝え広める人たちではないかなって。

辻 和美


ヨーガン レール 経歴
1944年 ポーランド生まれ、ドイツ人。1960年代、パリ、ニューヨークでテキスタイルデザイナーとして活躍後、1971年来日、ファッションブランド「ヨーガンレール」を立ち上げる。 1999年 石垣島に移住。自然素材を活かした手仕事にこだわったブランド、「ババグーリ」を立ち上げる。2014年 不慮の事故により永眠。

17th exhibition
factory zoomer reclimed blue

2017.06.30fri.-07.30sun.
11:00 →18:00

music :
cnblue / biue sky
norah jones / the grass is blue
手嶌葵 / 蒼と白~水辺、君への愛の詩~
sekai no owari / 青い太陽

factory zoomer reclimed blue

photo by suzuki shizuka

reclaimed blue project / 再生する青

私がガラスのリサイクルを始めたのは、エコロジーとか自然回帰などという高尚なテーマからは、ほど遠い次元でした。どちらかというと、他人の家の食器棚の心配をするお節介体質からくるものだと思います。 「いらなくなった、めんちょこ、引き取ります」。 「めんちょこ」という名前をつけた黒いガラスを外被せし、カットを施したシリーズの作品を、18年作ってきています。これは工房の定番作品で、簡単に見積もっても十万個は作ってきた計算になります。(実はあらためてビックリしている)まあ、それだけ沢山の方の食器棚にお邪魔していれば、もう片隅に追いやられているもの、捨てるに困っているものもあるはず。(これに関しては、人間はどんな定番でも飽きる動物だと思っているので、最近は案外クールにかまえている)「もしご家庭にいらなくなった、めんちょこがありましたら、工房で溶かし直し、新しい作品に生まれ変わらせます」。と、5年前に「reclaimed blue project / 再生する青」と名付け、工房にたまった廃棄用の黒いガラスを中心に、溶かし直しをスタートしました。ごちゃ混ぜに溶かすと、絵の具のようにグレーのガラスになるかと思いきや、藍色とよんでもいいような深い青が生まれました。特別な調合をしたわけでもなく、ガラスの持っている性質に逆らうことのない溶かし直しで、オマケのようにできた美しい青。直感的に、自由で、少し特別なモノを作ろうと思いました。そして、リサイクルを声高々にうたうのはやめようと、そのモノ自体の美しさに人が惹かれ、再び、側に置いてもらえるモノに生まれ変わらせることが大切で、それがリサイクルかどうかはモノにとっては、実はどうでもいいことだと思っています。そして、その美しいモノを見たくて、性懲りもなく再び作るのです。

辻 和美


辻 和美 経歴
1999年金沢に、ガラス工房 factory zoomer を設立。ガラス器の新しいスタンダードを目指し、デザイン・制作を行う。その後直営店 factory zoomer / shop をオープン。2009年金沢市文化活動賞。2010年〜2016年まで生活工芸プロジェクトディレクターを務める。2016年 factory zoomer / gallery をオープン。

16th exhibition
antipast

2017.06.02fri.-06.25sun.
11:00 →18:00

music :
various artists / my best friend's wedding (original soundtrack)
dulce pontes / a brisa do coração
claudine longet / the look of love
various artists / a letter to true (original soundtrack)

アンティパスト

photo by suzuki shizuka

ロックな靴下

アンティパストは、今年26 年目を迎える靴下中心のブランドです。その独 自の模様に興味を持ちアトリエを訪ねたのが6 年前。デザイナーのカトウさ んとジヌシさんに実際にお会いしてお話を重ねる度に、靴下一足一足に込めた 二人の想いに心打たれる。よく見ると、そこには、天使や小鳥や多くの草花、 そして、ピースマークなどが、どのシーズンも繰り返し登場する。裏テーマ には、どこか、アメリカの60 年代のカウンターカルチャー、love & peace を感じさせずにはいられない。そう、既存の文化に対抗する文化を、足元から 熱く発信しているなんて書くと、大袈裟だよって言われるだろうか? いやいや、アンティパストの意味も、メインディッシュを洋服とすると、靴下をはじ めとする小物は、洋服をより引き立てる前菜という意味だけではなく、anti -past ― 過去ではなく、未来に向かって!というどこまでも、次を、明日を、前を見 ている二人は、哲学、美学、そしてどこかにanti- な気持ちをいつも持ち合わ せたロックな方々なのです。 さあ、明日、アンティパストを履こうじゃないか!

辻 和美


antipast 経歴
1991年2 月 Coup de Champignon 設立。1992 年10月 PARIS PREMIERE CLASS に ANTIPASTとしてデビュー。2000年 3 月まで PARIS PREMIERE CLASS の3 月、10月展に出展。 2000年10月、PHILIPPE MODEL氏所有のメゾンにてプライベートコレクションを開始。2005年、 S/S シーズンよりアクセサリー中心のANTIPASTに加え、ウエアーを中心とした + ANTIPAST を開 始。2007年10 月、パリの展示会を TER ET BANTINE SHOWROOM に移転。現在は年2 回の ペースでパリ、ミラノ、東京にて展示会を開催。

15th exhibition
ando masanobu

2017.05.03wed.-05.28sun.
11:00 →18:00

music :
evdonny hathaway / live
joni mitchell / shadows and light
miles devis / my funny valentine

安藤雅信

photo by suzuki shizuka

出会い

今となっては、多くのアーティストがいろいろなジャンルを軽やかに渡り歩き自由に物を作っているように見受けるが、ほんの20年ほど前は、彫刻や現代美術を強く志した者にとって、器を手がけるということは、人生のリセットボタンを押すことに近いことだったかもしれない。そして、陶磁器問屋の長男に生まれながら、彫刻家を目指した安藤さんにも、あまり選びたくなかった場所だったかもしれない……そう、オランダ皿に出会うまでは。 安藤さんとオランダ皿との出会いは目白にある古道具坂田の企画展である。展覧会に出遅れた安藤さんが偶然出会ったのはシンプルなデルフトのリム皿。その日から、現代の生活に沿う器に作り変える「写し」の試行錯誤が始まり現在に至る。その後、時代は、一気に白い器にシフトすることになる。若い世代の日本人の食器の文化を大きく変え、次世代の作り手にも大きな影響を与えていくことになる。 食器制作の傍ら、彫刻を作り続けてきた安藤さんが、ギヤを一段上げたようだ。今の安藤さんにとっては、器作りも彫刻作りも同じスタンス、生活という定点から見渡せば、すべてフラットな場所にいていいはず、そして、時代というものは、面白いもので、そのように感じた作り手が、同時代的に緩やかに集まってきた。それを私たちは生活工芸と仮に名付けている。今回の展覧会はその全てのはじまりになった安藤さんのオランダ皿と最近の小さな彫刻を同時に見せてもらうことにした。

辻 和美


● 5月2日 (火) 安藤さんによる中国茶会をfactoy zoomer/shopにて行います。
ご予約、お問い合わせ factory zoomer/shop 076-244-2892


安藤雅信 経歴
1957年岐阜県多治見市に生まれる。武蔵野美術大学彫刻科卒業後、多治見にて焼き物を学ぶ。その後現代美術家として活動するが行き詰まり、インドに滞在しチベット仏教を学ぶ。1994年、焼き物制作を生業とする。1998年、ギャルリ百草を開廊。ギャラリーオーナーとしても活動。2000年若手作家を支援するためのレンタル工房MAVOを開設。2010年著書「ギャルリ百草一美と暮らし」。

14th exhibition
noguchi

2017.04.14fri.-04.30sun.
11:00 →18:00

music :
everything but the girl / amplified heart
thestyle council / our favourite shop
the chemical brothers / surrender

mitani ryuji

photo by suzuki shizuka

「ケ」のジュエリー

そういえば、もう何年も左手の小指のリングをはずしていない。指輪を外すとそこは痩せてくび れてしまっているくらい長い間だ。友人に理由を聞かれ、答えると都市伝説だと笑い飛ばされた。 しかし、もう既にお守りのようになってしまった私のリングはそう簡単に外せない。火葬場で焼 いてもらった後、骨とそのリングだけが残るのを想像する。 ジュエリーにもハレとケが確実に存在する。私の中でnoguchiはまさにケを代表する、向かうと ころ敵なしのブランドだ。ジーンズとシャツだけの日でも、noguchiをどこかに身につけていると、 とりあえず、外には行ける。歳を重ねるとその役割の大きさを実感する。デザイナーは野口尚彦さ ん、男性だと聞いて驚いたが、ファッションを学び、その一部としてジュエリーを作っていると おっしゃる。持つ人の服に馴染み、肌に馴染み、最後はその人自身になっていくジュエリー。数 ある、生活のモノたちのなかでも、特別な立ち位置だと思う。そう考えてまた自分の左手の小指の リングをあらためて眺める。鈍く光るキズキズのゴールドが、自分といっしょに多くのことを受 け止め、人の縁、仕事の縁を繋ぎ止めてくれていたとやはり信じたくなる。

辻 和美


noguchi 経歴
文化服装学院にてテキスタイルデザインを学んだ野口尚彦は、更なる技術習得のため渡伊。 1999年よりフリーランスのアクセサリーデザイナーとして活動。2004年初めてnoguchiとし てのコレクションを発表。2006年東京恵比寿に直営店、2011年大人の女性向けのNOGUCHI BIJOUX青山店をオープンする。毎日の何気ない装いの中に自然に溶け込むアクセサリー感覚 のジュエリーを目指す。

13th exhibition
mitani ryuji

2017.03.10fri.-04.09mon.
11:00 →18:00

music :
pann burton / ballads&burtonbr
stan getz&joao gilberto / getz/gilbertobr
keith jarrett / the melody at night,with you

mitani ryuji

photo by suzuki shizuka

作りながら生きていく

早いもので、/galleryを開いて丁度一年になる。この記念すべき13回目の企画に三谷さんを迎える事が出来てとても嬉しい。 三谷さんは、私にとって、モノづくりの兄貴分でありながら、ちまたで一括りにされる、生活工芸派(笑)の同志でもある。私たち、生活工芸派(ふふふっ)は、よく一緖に語られることが多いけど、案外違うことを考えていたりする。ただ、日展、伝統工芸、クラフト、kougei 立体造形と、時代とともに工芸の居場所の移りゆく姿を横目で見つつ、いつも感じていた違和感、居心地の悪さは共通していたのではないかと思う。自分たちのやっていることはいったいなんなんだろう?私たちはただ、工芸をもとあった生活という場所に戻していきたいだけ。いや、そんなことも望んでいない。気持ちの良いテーブルでの食事、家族との当たり前の会話、友人からお菓子をもらったから、珈琲を淹れる、そんな何でもない毎日が、ずーと続きますようにと、せっせと手を動かすだけ。日々の暮らしが自分たちに物を生み出す力を与えてくれてるのだから。生きている限り生活のための道具や器を作り、一人でも多くの人に手渡していきたいと願う。 ただ、それだけです。一年間支えてくれた皆様に感謝します。

辻 和美


● 3月10日は13時から三谷珈琲店オープン。三谷さんがマスターになり珈琲を淹れてくださいます。タタンさんの特製ケーキもご用意します。


三谷龍二 経歴
1952年福井市生まれ。1981年松本市に工房PERSONA STUDIOを設立。それまで家具中心だった木工に、普段使いの器としての新たな分野を開く。同時に、積み木や薬缶など生活風景をモチーフにした親密性の高い絵画や立体作品も制作する。1985年より「クラフトフェアまつもと」「工芸の五月」(松本市)発足より運営に参加。2011年松本市内にギャラリー10cmを開店。店の建つ通りで「六九クラフトストリート」を企画するなど、「工芸と暮らしを結ぶ」活動を続ける。

12th exhibition
n100

2017.02.10fri.-03.05sun.
11:00 →18:00

music :
patti smith group / easter
david bowie / low
various artists / basquiat (original soundtrack)

n100

photo by suzuki shizuka

もう一枚の皮膚

同じ形で同じ色のセーターを2枚買うなどという贅沢を教えてくれたのは、このn100が初めてであ る。止めどなく動いているアパレルの世界に、毎日違う服を着るのではなく、毎日着る同じ服を提 案してくれた。マーガレット・ハウエルやカルバン・クラインなどの洋服の世界でデザインや商品 企画を経た大井幸衣と橋本靖代が、9年前に始めたブランド。まさにファッション界の酸いも甘い も嚙み分けて至った形。そんな玄人の服である。 出会いは、大井さんのアパートに数枚のカシミアセーターを見に行ったのが最初である。とても細 いカシミアの糸で編んであり、セーターなのに、tシャツのように軽く、動きやすく、自然に身体に フィットした。勧められた通りに購入したカシミアtシャツ、チャコールグレーは何回かのお直しを 経て、まだ現役。もう一枚の皮膚と言っても過言ではないほど、ヘビーローテの中にいる。昨年、 このセーターが着れなくなったらどうしようかと思い、同じものを買い足した。 セーターを通して繋がったのは何より二人との友情かとも思う。いつも近くにいるわけではないが、 たまに会っても、昨日の続きのように迎えてくれる。近すぎず、遠すぎない、大人の普段着の付き 合い。いままでありがとう。これからもよろしく。

辻 和美


● 2月10日(金)はトラネコボンボンさんによるピンクのポタージュを召しあがっていただけます。


n100 経歴
2007年n(エヌ)立ち上げ。2008年大井幸衣・橋本靖代により、究極的に小さなトータルアパレルブランド、n100(エヌワンハンドレッド)として再スタート。100年経っても好きなもの、もしか したら変わらず着ているかもしれないものだけを、こつこつ作り続けたいという願いをこめて名付けられた。2009年(株)EIGHTY YERS PRODUCT 設立。東神田に事務所兼直営ショップを オープン、同年にn100 tokidoki shop オープンする。

トラネコホンホンのカレーランチ

017.02.11sat.12sun. 12:00~17:00(無くなり次第終わり)

カレーランチ 2000円

menu
カシューナッツ&ゴアフィッシュカレー2種盛り合わせ
ターメリックライス
サラダ・ピクルス・デザート

/galleryで開催中のn100の展覧会にあわせて、トラネコホンホンの中西さんが、/shopでカレーランチイベントをしてくれます。今回はみんなの大好きなカレーを作ってくれます。 これが、とっても美味しいのですよ!今回は全く予約無しで、来てすぐ食べられる感じにしようと思います。みなさん、温まりにきてくださいね。お待ちしています。
※お越しの際は、公共交通機関をお使い下さい。駐車場はお近くのパーキングをご利用下さい。
※予約制ではないため、お昼時は混雑が予想され、お待ち頂く場合がございます。 トラネコボンボン carry de bonbon

11th exhibition
light years

2017.01.13fri.-02.05sun.
11:00 →18:00

music :
alexander schiffgen / orient-express: the musical travelogue
阿部海太郎 / cinemashka, chika-chika cinemashka

tsukudashingo

photo by suzuki shizuka

ラリー( 繋ぐ、混ぜる)キルト

インド、パキスタン、バングラデシュ地域に見られる、布を幾重にも重ねてランニングステッチを ほどこしたキルトは、ラリーキルトまたは、カンタと呼ばれています。表と裏が全く違う印象で、 1枚で2通り楽しめる布です。ジプシーの女性たちが、手で施す不揃いの針目、気の遠くなるような ニードルワーク、もともとは、インドの女性が身につけるサリーをリサイクルして作られていたそ うです。色の組み合わせ、花柄にチェック、水玉模様などが同じ面に一緒になり、偶然性が作るパ ターンの美しさに魅了されて、グッとくる1枚に出会うと、簡単に置いては帰れません。 福岡、博多にお店を構えるlight yearsとの出会いもこのラリーキルトです。大きな扉を開けるとそ こには重厚な家具とインドやモロッコのラグや日用品が並び、心躍ります。オーナーの前田淳さん が、旅して自分の目で一点一点確かめながら集めた物ばかりで、そのクオリティーには定評があり ます。前田さんは世界中の手仕事に興味があるといいます。大量生産大量消費ではなく、人間の手 で生活に必要な物を必要なだけ作り出すくらいが良い。そんな物作りには、私たちが失っなってし まったものが見え隠れして、懐かしくて、新しいのかもしれません。

辻 和美


●1月13日(金)は福岡在住の料理家・渡辺康啓さんが暖かい無国籍スープを作ってくれます。


light years 経歴
「strange to meet you」を合言葉に旅先での縁が赴くまま活動中。
福岡を拠点にモロッコのラグやインドのキルトなどを扱うショップ「light years 」と
世界中のカゴを集めた「1834(かごや)」を今年夏オープンした。www.light-years.jp

10th exhibition
tsukuda shingo

2016.12.16 fri.-2017.1.09 mon.
11:00 →18:00

music :
brinsley schwarz / the new favourites of brinsley schwarz
ronnie lane / ronnie lane's slim chance
grateful dead / live dead

tsukudashingo

photo by suzuki shizuka

写しとコピーは似て非なり

アメリカの大学のガラス科の課題で、自分の好きな作家の作品を丸々、そっくりに作ってみなさい。という課題があった。やったことのない技法を試したり、そ の形になるまで、何回も練習を繰り返したりと、その課題から学ぶことがとても多いのに驚いた。ただ、その後、困ったことにその作家の作風が自分から抜けず に、随分と悩んだことを覚えている。作家の意図や考えにまで思いが行き届かず、その物の目で見えるところだけ模写してしまった結果だろうか・・・と今になっ て時々思い返すことがある。 一方、日本の工芸においては、古くから「写し」というジャンルがある。基準となる作品や実物をなぞらえ、形状や模様、図柄を模倣して作ることで、刀、陶磁 器では多く見られる。私個人は既に価値を認められた物を再び模倣して作ることに戸惑いを感じる。これは各々の作家の立ち位置の問題で、何が良くて、何が悪 いということではないのだが、今回紹介する木工作家の佃眞吾さんも昨今の写し方に問題があると話してくれた。「生き写しでないとコピーでしかない」。という 彼の言葉には、過去の形を借りる以上、それを単にコピーするのではなく、一旦自分自身の中に取り込み、対話させ、音楽で言えばカバーするという、つもりで 作るという意味がある。作り手が成熟していないと、いつかの私のように、過去に持っていかれてしまうのだろう。 たしかに、彼の作品は写した物もゼロから作った物もすべて佃眞吾の匂いがする。

辻 和美

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